誰かの挑戦の裏側には、表からは見えない葛藤や原体験があります。
CARPONIX SOCIAL「未来ギフト」では、社会を少しずつより良い方向へ進めようとしている挑戦者たちの物語をお届けしています。
今回ご紹介するのは、米粉研究家・駿河かおりさん。
「食べられない」という制約を「諦め」に変えるのではなく、新しい可能性へと変え続けてきた、その挑戦の裏側を伺いました。

米粉研究家
駿河 かおり
KAORI SURUGA
千葉県八千代市を拠点に、米粉の商品開発と料理教室を運営。グルテン不耐症をきっかけに米粉と出会い、地元農家と連携した米粉づくりからスタート。「家族全員が食べられるラーメンを」という想いで開発した【米粉のつるつるラーメン「あかり」】は、海外展開も進行中。米粉の普及と食の可能性を広げる活動を続けている。
制限だらけの食卓から、米粉との出会いへ

食事制限のある家族を持ちながら、自身もグルテン不耐症を抱えるかおりさん。
「食べられない」という制約の中から、米粉との出会いは生まれました。
── ご家族の食生活について教えてください。
夫と出会ったのは大学時代です。付き合って1年後に「僕は一生治らない腎臓病を持っている」と教えてもらい、それを知った上で結婚を決めました。
食事は私が担うことになり、夫には減塩食、自分の分には少しだけ味付けを加える。そんな毎日が始まりました。
── 食事の大変さが特に増したのはいつ頃ですか?
子どもが生まれてからです。
成長期の子どもにはタンパク質をしっかり摂らせなければならない。夫の食事とはまったく正反対なんです。
だから、私と子どもの食事と夫の食事を別々に作って、それが1日3回。
つまり、毎日6食を作っていました。
外食もほとんど行けないので、旅行先にも専用の食事を用意して持っていきます。
こんな生活を20年以上続けました。
── かおりさん自身の食生活にも変化があったそうですね。
15年ほど前に、小麦を食べると体の具合が悪くなることに気づきました。
調べると、グルテン不耐症だとわかりました。もともと小麦製品が大好きだったのでショックでしたね。
すでに食事を制限している中で、さらに食べられないものが増えると「つまらなくなってしまうな」と思いました。
そんな時に出会ったのが米粉です。
「じゃあ、やってみよう!」と使い始めたら、パンもケーキも自分で作ればいいんだと気づいて。
新しい趣味ができた感覚で、とにかく楽しかったですね。
いきなり「ドンドン!」米粉ラーメンへの道

米粉の使い方を広めていく中で、かおりさんはやがて「自分で米粉を作る」という挑戦へと踏み出します。
きっかけは、料理教室の生徒さんからの素朴な一言でした。
── 米粉の商品開発を始めたきっかけを教えてください。
料理教室で「米粉ってどこで買えますか?」とよく聞かれるうちに、「自分が使っている米粉、どこのお米なんだろう?」と気になりだしたんです。
そんな時、以前農家さんから「八千代市は意外と知られていないけど、お米を作っているんだよ」と聞いたことを思い出して。
八千代のお米で米粉を作ればみんなハッピーになる!と思いました。
── それで農家さんに連絡を?
いきなり扉を「ドンドン!」ですよ(笑)
農家さんに「粉にします!」と言ったら、「うちは丹精込めてつくった1等米しか出さないのに、それを粉にするとはどういうことだ!」と何件もお叱りを受けました。
それでも「変なことを言っている人がいる」と面白がってくれた農家さんがやっと見つかって。
次は製粉業者を探す旅で、展示会を回りながら「これだ!」と思える社長さんに出会いました。
農家さん探しから製粉業者探しまで、それぞれ1年ずつかかりましたね。
── そこからラーメン開発へと進んだのはなぜですか?
うちはラーメンを食べたことがない家庭だったんです。
夫は塩分が高いから食べられない。市販の減塩ラーメンは小麦製品なので私が食べられない。
家族全員が食べられるラーメンが、世の中にないと気づいたんです。
それならばハードルが高い方に挑戦しようと思いました。
私が米粉の減塩ラーメンを作れば、同じように困っているご家庭があるかもしれないと。
── 開発は順調に進みましたか?

最初の試作品は「フォーですね…」という仕上がりで(笑)、次は「うどんですね…」。
ラーメンを食べたいと思って買ったのに「まぁこんなものか」と思いながら食べてほしくなかったので、色も食感もちゃんとラーメンであることにこだわりました。
小麦を一切混入しない専用工場を名古屋でようやく見つけて、そこからも試行錯誤の連続でした。
麺の太さ、茹で時間、水分量の調整……米粉が最大限入るギリギリの線を何度も攻めながら、コシのある食感を目指しました。
製麺方法もいくつも試して、完成させるまでに1年以上かかりましたね。
それだけ手間がかかっても、「このラーメンなら家族全員で食べられる」と思えるものを作りたかったんです。
「食べていいんだよ」活動の原点となった涙

華々しい商品開発の裏側には、かおりさんを突き動かし続ける原体験があります。
米粉教室を始めたばかりの頃に出会った、ある親子との記憶です。
── この活動を続ける原動力はどこにあるのでしょうか。
料理教室に来てくれた2歳の男の子のことが、今でも忘れられなくて。
首には「ぼくはアレルギーです」という名札がついていました。
その日は卵も乳も小麦も使わない蒸しパンを一緒に作ったんですが、できあがった蒸しパンを前に、その子はすぐに食べようとしないんです。
その年齢の子どもって、目の前に食べ物があればすぐ手を伸ばすじゃないですか。
なのに、お母さんに何度も「食べていいの?食べていいの?」と確認していて。
ふとお母さんを見たら、泣きながら「食べていいんだよ、食べていいんだよ」って。
食べ物に対してここまで苦しい思いをする人がいるんだということを、その時に初めて目の前で見ました。
それがこの活動の本当の原点です。
── その男の子とは今もつながっているそうですね。
もはや広告塔みたいになっています(笑)
新しい米粉料理を作るたびに食べてもらって、「うん、これはちょっと甘さが〜」なんて感想をもらうんですよ。
アレルギーは成長につれてほとんど克服しましたが、本人はもう「米粉の方がいいから食べたい」と言ってくれています。
今では元気な野球少年になっていますよ。
── ご家族の支えについても聞かせてください。
夫は、私がやりたいと思ったことを常に応援してくれます。
起業を決めた時も「助かる人たちがいっぱいいるんだったら応援するよ」と背中を押してくれました。
今も言葉だけじゃなくて、重い米粉が届いた時に荷物を運んでくれたり、いろんな場面で手を貸してくれています。
20年以上、食事制限と向き合いながら穏やかに過ごしてきた夫の存在が、私のすべての出発点にあります。
代替品じゃなく、選ばれる米粉へ

ラーメン開発という高い壁を越えたかおりさんが見据えるのは、自社の商品展開にとどまらない、もっと大きな景色です。
── 今後、米粉をどのように広めていきたいですか?
米粉の商品も料理教室も増えてきてはいるんですが、小麦粉のように各家庭に1袋あるというところにはまだ届いていなくて。
米粉は見た目は小麦粉と変わらないけれど、そのまま置き換えればいいというわけじゃない。
使い方のコツを教えられる先生が増えていかないといけないと思っているので、先生を育てる教室もやっていきたいです。
── 商品開発の方向性についてはいかがですか?
「グルテン不耐症があるからこれでいい」と諦めながら食べるんじゃなくて、米粉の商品が美味しいから選びたい。そういう世界にしたいんです。
今開発中の冷凍米粉パンも、アレルギー対応とはあまり言いたくないくらい、純粋に美味しいものを目指しています。
「このパンだから選びたい」と思ってもらえるものを作りたいですね。
── 海外展開も進んでいるそうですね。
米粉ラーメンのキャラクター「あかりちゃん」が、海外でも活躍し始めています。
昨年9月にシンガポール、今年2月にはオーストラリアへ。
来月は台湾で千葉県産品フェアに参加し、ニューヨーク・ブルックリンでは3,000人分のサンプルを持って試食販売と商談会に臨む予定です。
最初にシンガポールを選んだのは、規制が緩やかで輸出の実績を作りやすかったから。
「輸出経験はありますか?」と聞かれた時に、シンガポールでの実績があると話せることが次につながると教えてもらいました。
アメリカはFDAの規制など課題が多いですが、グルテンフリーへの関心が高いブルックリンなら!と期待を胸に、着々と準備を進めています。
── 最後に、今まさに何かに挑戦している人へメッセージをお願いします。
2つの選択肢があったら、ハードルが高くてワクワクする方を選ぶということを意識しています。
従業員にもよく言うんですが、「ちょっと斜め右にある方を選べ」って。
すごく上じゃなくていい、ちょっとだけ上でいい。
多分こっちの方が成功するだろうなと思っている方よりも、少しエキサイティングな方を選んでみてください。
きっとその先に、思いがけない出会いや景色が待っていますから。
撮影協力 つばめ農園様(千葉県市原市)
千葉県市原市で、自然と共生する減農薬栽培に取り組む農業生産法人。
生産から販売まで一貫して行う「農家直送」のお米づくりを実践されております。
●編集後記
取材前に試食した米粉ラーメンは、「本当に米粉なの?」と思うほどの美味しさで、特に麺のコシは本物のラーメンと遜色ないものでした。
農家さんとお米について熱心に語り合うかおりさんの姿からは、商品への真摯な想いが伝わってきました。挑戦の裏側には、人とのつながりと、積み重ねた誠実さがありました。

CARPONIX SOCIAL「未来ギフト」について
CARPONIX SOCIALでは、取材させていただいた挑戦者の皆さまへ、感謝と応援の気持ちを込めて「CARPONIX GIFT」をお届けしています。
日々、誰かのために挑戦を続ける人こそ、自分自身を整える時間が必要だと、私たちは考えています。未来ギフトは、“誰かを支える人を支えたい”という想いから生まれたプロジェクトです。
●国産黒高麗人参のサプリメント:CARPONIX
●大切なお父さんへのギフト:「Father’s Day」GIFT